
採用面接となると、誰しもが緊張するもの。何か厳しいことを言われたりしないだろうかと、ドキドキしますよね。
採用面接の中でも、応募者に心理的な負担の大きなものは、圧迫面接と呼ばれています。
ストレス耐性をチェックするために圧迫面接しているのだと言われていますが、実はほとんどの場合、圧迫面接が行われる理由は、別のところにあります。
【目次】
多くの求職者を苦しめる圧迫面接
「君さぁ、何で内定もらえないか分かる?」
「君は、うちの会社に向いてないよ」。
面接でこんなこと言われたら、誰だって嫌な気持ちになりますよね?圧迫面接では、こちらがへこんでしまうようなことを、平気で言われたりするんです。
内容としては、この仕事に向いていないというものや、能力不足を指摘するもの、なぜそう思ったのかという根拠をやたらと突っ込んで聞いてくるもの、いくら説明しても納得してもらえないものなどが、主なものです。
採用面接を受ける側としては、「どうしてこんな圧迫などされなければならないのか」と理不尽さを感じる人も多いでしょう。
しかし、それも圧迫面接が行われる背景を理解できれば、納得できるでしょう。
圧迫面接が生まれる背景
圧迫面接なんかやっても、その企業のイメージが悪くなるだけ。なのに、どうして圧迫面接なんてするのか、疑問に思いますよね。
実は、どうしても面接に来た人を圧迫してしまう理由があるんです。
一人当たり、とんでもない採用コストがかかっている
理由の一つ目が、採用コスト。みなさん、一人の内定者を出すのにいくらかかるか、知っていますか?
大手企業の競争倍率を見ていると、高いところで2750倍なんてところもありますが、ここでは仮に500倍と仮定しましょう。
採用選考を受けるにあたって、まずSPIなんかの適性検査を受けますよね。テストの内容にもよりますが、一人当たり5千円程度と仮定します。すると、一人当たりの採用コストは、500倍×5千円=250万円となります。
実際には、合同企業説明会のブース代、会社紹介のパンフレット作成料、就活サイトへの求人広告の掲載料、採用活動に関わる人の人件費など、たくさんの費用がかかっているので、もっと高くなります。
一人の内定者を出すだけでもこれだけのお金がかかるわけですから、面接する側もそれだけ必死になってきます。
私の就職先だった会社(中小企業)でも、人事の人が「採用するのに、一人当たり数十万円はかかっている」と言っていました。
中小企業でもそれだけのお金がかかっているということは、大企業ともなるともっとお金がかかっているということになります。
さすがに、これだけお金がかかると、厳しくなるわけです。
途中で辞められると、かなりの損失・トラブル
一人の内定者を出すのに相当お金がかかっているということは、内定を辞退されたり、入社してもすぐに辞められたりすると、かなりの損失になるということ。
一人当たり何十万円(下手をしたら何百万円)の費用がかかっていながら、会社の収益に貢献することなくいなくなってしまわれると、かなり痛いですよね。
それに、企業の側にも採用計画というものがあるので、せっかく内定者が確定しても、次から次へと辞退されてしまうと、あわてて追加で募集ということになりかねません。
そうなってくると、採用コストはさらに増えてしまうし、採用活動のスケジュールも大幅に狂ってしまって、トラブルを生む原因にもなります。
だから、内定を出したら絶対に来てくれるのかや、入社してもすぐに辞めてしまわないのかを、すごく気にするんです。
「本当にうちが第一志望なの?」ということを面接で徹底的に追求してくるのも、そのためです。
こういった採用コストがかかるということや、すぐに逃げられると大きな損失になるという問題は、いわゆる「オワハラ」の原因でもあります。
求職者の準備不足・意識の低さ
圧迫面接が生じる原因は、企業側だけでなく、面接を受けに来る側にもあります。
しくじってしまえば、かなりの損失になってしまうということで、採用担当者も必死になってくるにも関わらず、十分な準備もせずに面接に来たり、働こうという意識が希薄だったりすると、やっぱり圧迫されます。
勉強やアルバイトなどで忙しくて準備が間に合わなかったり、何をどうしていいのか分からずに出遅れてしまったりなど、準備不足になる原因もいろいろあるでしょう。
また、大学で学ぶことの大半は、仕事と直結しない内容のものがほとんどであるため、学んだことを仕事で生かしながら働くというイメージを持ちにくいということもあります。
大学は職業訓練の場ではなく、学問の場なので、仕事に対する意識を高めにくいというのもあるのでしょう。
就職活動というのは、いわば自分という商品を会社に売り込むという営業活動です。
つまり、相手は自分にとってはお客様なわけですから、何か納得できないことや気に入らない点などがあれば、すぐに厳しい質問が飛んでくるわけです。
完璧だった面接のケース
圧迫されないようにするためには、何に気を付けたらいいのか、気になりますよね。
私は就活生だった時に、社長面接で社長から「完璧ですね~」と言われた経験があるので、参考までにその時のことを書かせていただきます。
その時の状況はというと、大学院の研究で忙しくて就活が思うように進まず、この会社を落としてしまったら終わりなんじゃないかというような切迫した状態でした。
私は、就活サイトや会社のホームページからだけではなく、合同企業説明会にも何度も足を運んで、担当の人事の人から、どんなスキルが必要になってくるのかなどの情報を入手していました。
流体力学や統計学を勉強しておけばいいよと言われたので、独学ながらも少しだけ勉強して、面接ではそれをアピールしました。その結果が、社長のあの一言だったわけです。
さすがに、ここまで準備をしておけば、熱意は伝わりますし、「そこまでちゃんと準備しているのか!」と相手方にも好印象を持ってもらえます。
面接は事前の準備がとにかく大事で、つっこみどころのない、ちゃんとした受け答えができていれば、圧迫されることはまずありません。
逆に、「この子、本当に大丈夫なの?」と担当者の心の中にモヤモヤを生じさせてしまうと、それが圧迫してくるような質問へとつながります。
私といっしょに社長面接を受けた女の子がいますが、その子は社長をモヤモヤさせてしまったらしく、「今の、どういうこと?」と言われ、「あ・・・いや・・・今のは、ナシで・・・」と受け答えしていました。
圧迫されないためには、相手にモヤモヤした気持ちを持たせないことが重要で、そのためには入念に準備して、熱意がしっかり伝わるようにアピールすることが大事なんです。
圧迫面接体験と分かったこと
次に、私が実際に受けた圧迫面接と分かったことについて、まとめます。
私が圧迫面接を体験したのは、全くの畑違いの税理士業界に転職した時でした。
準備にも十分な時間をかけ、それなりに資格も取り、熱意も十分あり、転職エージェントから、今まで見たことが無いと言われるほどのレベルの高い自己PRを作っていても、結果はさんざんでした。
面接の相手は、かなり感じの悪い所長で、こちらがお客様の業務分析や改善提案のようなコンサルタント的なこともやりたいと言うと、お客様はそこまで求めていないと言われました。
他にも持っている資格などについてもアピールしましたが、そんなもんよりコミュニケーション能力の方が大事だみたいな感じで、話を全然聞いてもらえなかったですね。
その後に、なんとか別の事務所にコネで入所することはできたものの、圧迫面接で言われたことは正しかったなと実感しました。お客様は、とりあえず記帳と税金の計算だけやってくれみたいな感じで、改善提案を求められることは、ほとんどなかったです。
資格も言われたとおり、役に立たなかったです。(私は税理士試験の会計科目合格者ですが、実務では日商簿記2級程度で十分といった感じでしたね。)
実際に仕事を体験してみて分かったことは、圧迫面接はストレス耐性を見ているのではなく、本当のことを言われているだけということです。
面接を受けに来た人にわざと意地悪な質問をして反応を確かめているのではなく、担当者は思ったことをそのまま正直に言っているだけなんです。
ストレス耐性説は本当か?
圧迫面接が行われる理由としてよく挙げられるのが、ストレス耐性をチェックしているというものです。就職・転職サイトで挙げられている理由の大半が、これです。
確かに、上司や顧客から不条理なことを言われてストレスを受けることなんてよくあることですから、ストレスに強いのかどうかを調べるのは、大事なことです。
しかし、圧迫面接などしなくても、ストレス耐性は調べることができます。
履歴書をチェックして、厳しい受験戦争を勝ち上がってきた人かどうかや、練習がハードな体育会系のクラブで活躍した実績があるかどうかを見れば、だいたいは分かるものです。
調べてみると、SPIのオプションでストレス耐性に関するレポートもつけられるようなので、わざわざ面接で圧迫してストレス耐性をチェックするという、手間のかかる上に企業のイメージも悪くしてしまうようなことをする必要はありません。
そんな面倒なことをするんだったら、SPIで追加料金を払って、ストレス耐性に関するレポートを出してもらうでしょう。
なので、ほとんどのケースの場合、ストレス耐性をチェックしているというわけではないんです。
少数ながらも、ストレス耐性を見るために圧迫面接をするというところもあるでしょうが、大半の場合は、担当者が疑問に思ったことなどを正直に言ってきているだけです。
だから、準備がしっかりできていれば、圧迫されることは、ほとんどないと思っていいでしょう。
面接で圧迫してきていると感じるのは、ほとんどの場合は単なる思い込みで、採用担当者は、思ったことをそのまま正直に言っているだけなんです。
圧力をかけようなどという意図は、実は全くないんですね。
単に、採用担当者の必死さを圧力として感じ取ってしまうというだけです。