いつも漠然とした不安があったり、自分の勝手な思い込みによって職場の人間関係がギクシャクしてしまったり・・・。思い込みが激しいと、それだけ悩みやトラブルも多くなってしまいます。
でも実は、ちょっとした勘違いが、思い込みの原因になっていることがあるんです。
そこで、論理の力によって、思い込みを解消するにはどうすればいいのかをご紹介します。
【目次】
論理の力で悩みが解決できる
「論理的に考えるようになっただけで、本当に悩みやトラブルが無くなるの?」と疑問に思われる方もいらっしゃるでしょう。
実は、悩みを抱える多くの人は、自分が不合理な考えをしてしまっているということに気がついていません。心理カウンセリングでは、その不合理な考えに気づかせることによって、問題の解決をします。
この気づかせ方には、大きく分けて二つのパターンがあります。
一つは「傾聴」といって、ひたすら相談者に寄り添いながら、相談者の話にじっくり耳を傾けるというもの。
相談者は、自分が話したいことを自由に話すことで、自らの力で自分の考えの歪みに気がつくようになるんですね。話をじっくり聞いて欲しいという人に向きます。
ただ、この方法だと、相談者が自分の考えに固執してしまっている場合や、ひたすら愚痴を言ってばかりの状態だと、なかなか前に進みません。
そこでもう一つの方法が、「認知行動療法」といって、カウンセラーが積極的に考えの歪みを直すというものです。
傾聴では、相談者が自分で考えの歪みに気がつくようにうながすので、それだけ時間がかかってしまうことがあります。一方で、認知行動療法では、カウンセラーが手助けをする分、比較的短期間で結果が出やすいです。
(ちなみに、認知行動療法をする場合でも、ちゃんと相談者の話をよく聞いてから考えの歪みを正します。一方的にカウンセラーに論破されるというわけではありませんので、そのへんはご注意を。)
いずれの方法にせよ、自分の考え方の歪みに気づくためには、ある程度の論理力が備わっているということが重要です。
押さえておきたい「必要条件」と「十分条件」の違い
思い込みを解消する上で、ぜひとも押さえておいて欲しい考え方があります。
それが、「必要条件」と「十分条件」の違いです。
どうしてこれが重要になってくるのかというと、思い込みが生じる際には、この二つがゴチャゴチャになるからです。(高校の数学で習った時にも、頭が混乱したという人も多いはずです!)
念のために定義を書いておくと・・・
「PならばQ」が成立する時、
QはPであるための必要条件
PはQであるための十分条件
・・・となります。
これでも分かりにくいので、図で説明すると、次のようになります。
PがQの中に含まれているというのが分かるかと思います。では、もう少し具体的にしてみます。
あなたの近くに異性の同僚や知り合いがいたとして、以下のようにP、Qを設定してみましょう。
P:相手はこちらに好意がある
Q:相手はこちらに親切にしてくれる
そうすると、「相手はこちらに好意があるならば、相手はこちらに親切にしてくれる」という「PならばQ」が成立します。
QはPであるための必要条件というのは、相手がこちらに好意があるということを証明するためには、相手から親切にしてもらっているという事実が必要だということです。親切にしてもらってないと、好意があるって言えないですからね。
一方、PはQであるための十分条件というのは、相手がこちらに好意を持っていれば親切にしてもらえるけど、別に好意を持っていなくても、親切にしてもらえることもあるということです。
つまり、何か下心があって親切にしてくる場合もあれば、単に人間関係で余計なトラブルになるのを避けるために親切にしているだけということも考えられるんです。
だから、Pがなくなったとしても、Qは十分存在できるので、PはQであるための十分条件というわけなんですね。
少しややこしい必要条件と十分条件の違いを、分かっていただけたでしょうか。
取り違えると地雷を踏む
面倒な解説が長くなってしまいましたが、ここからいよいよ本題です。
注意したいのは、必要条件と十分条件を取り違えてしまうと、地雷を踏んでしまうということなんですね。
先ほどの例でいうと、異性から親切にしてもらったからといって、その人はこちらに好意があるとは限りません。たんに人に親切にするのは当たり前だと思っているから親切にしているだけということもあるんです。
それにも関わらず、「異性に親切にしてくるなんて、きっと好意があるに違いない!」なんて勝手に思い込んでしまうと、困ったことになります。
好意があると勘違いしてしまうと、その後の対応もしくじります。そうなると、周囲の人の前で恥をかくことにもなりかねません。
PならばQというのは成り立ちますが、その逆のQならばPというのは、必ずしも成立しないんですね。
そこが、けっこう厄介なところです。
「それって、本当に成り立つの?」ということに注意しておかないと、痛い目に遭いかねません。
どうして判断を間違うのか
思い込みが激しい人は、QならばPも必ず成立すると思い込んでいるんですね。まるでPとQが表裏一体であるかのように思い込んでしまっているわけです。
しかし現実は、いつも原因と結果が1対1の関係で結びついているというものではありません。
上の画像を見て、「あ~、キスしてるんだな・・・」と思った人は、すでに思い込みをしています。もしかしたら、女性が男性に詰め寄って「ちょっとぉ~、あなた浮気したでしょ!」と言っている可能性もあり得るわけです。
キスをしているなら、男女が向かい合って立っているというのは成り立ちますが、男女が向かい合って立っているからといって、キスをしているとは限りません。
それにも関わらず判断をミスしてしまうのは、経験が不足しているからというのもあります。
人間は判断を下す時に、無意識的に自分の過去の経験を当てはめて考えているため、十分な経験を積んでいないと、偏った判断になってしまうんです。
自分の今までの経験に基づいて判断を下しているわけですから、その判断が間違ったものであったとしても、本人はなかなかそのことに気がつきません。
なので、本人に質問を投げかけて、考え方の歪みに気づかせる必要があるわけです。
論理が成り立っているのかを見抜く質問
それでは、どんな質問をすれば、思い込みをしていることに気づくことができるのでしょうか?
質問の内容としては、いたってシンプルです。バイロン・ケイティという人の「人生を変える4つの質問」というのがあるのですが、その質問のうちの2つで十分です。
4つの質問の詳しい内容は、こちらの本に書かれています。
「それは本当でしょうか?」
「その考えが本当であると、絶対言い切れますか?」
上記の『ザ・ワーク』に書かれてある4つ質問のうちの2つ
たったこれだけです。難しいテクニックなど、使う必要はありません。
場合によっては、この記事でも紹介した必要条件と十分条件の図も使いながら、何がPで何がQになるのかを考えながらやるということも考えられますが、それ以上のことはやる必要なないでしょう。
あまり難しいことをやろうとすると、かえって思考の妨げになります。
「自分は何もできないから、ダメ人間なんだ」と思い込んでいる人に対しては、「本当に何もできないから、ダメ人間なのでしょうか?」という質問でいいんです。
ダメ人間なら何もできないというのは成り立ちますが、何もできないからといってダメ人間であるというのは成り立ちません。
優秀な人であっても、メチャクチャな環境だったら身動きが取れずに何もできないということだってあるわけですから。
こうして考え方の歪みに気づいていけば、悩みも消えていくはずです。
原因と結果は、常に1対1で結びついているとは限りません。
「もしかしたら、他の可能性もあるのでは?」「本当に、その考えはいつも成立するのか?」ということに気づけるようになれば、解決策も見えてきます。