「あっ、しまった!忘れた!!」。
こんな経験をしたことがあるという人は、多いのではないでしょうか。
普通の人でも、たまに忘れますが、ひどい人ともなると、その回数は半端ではありません。しかも厄介なことに、気をつけているつもりでも、何度もやってしまい、周囲からはだらしがないと思われてしまったり、自己嫌悪に陥ったりする人も・・・。
今回は、なかなか忘れ物がなくならない人が、いかにして忘れ物を克服すればいいのかをご紹介します。
人のタイプによって、忘れ方は違う
忘れ物が多いといっても、どんなふうに忘れやすいのかは、その人のタイプによって異なります。忘れ方のタイプとしては、大きく分けて次の3つのパターンがあります。
①一点に注意が集中しすぎてしまう
何か自分が気になるものがあると、そこに全ての注意が集中してしまうため、他の部分に対する注意が無くなってしまうというパターンです。
細かいことにこだわる傾向の強い人に、多く見られます。「木を見て森を見ず」の状態になってしまい、忘れているものがあっても、気がつきません。
②注意が散漫になってしまう
目の前の準備に集中できず、関係のない余計な考え事などをしてしまうため、注意力が散漫になってしまい、忘れているものがあっても気がつかなくなるというパターンです。
好奇心旺盛で、空想するのが好きな人に、多く見られます。そのような人は、頭の中の情報整理もうまくできないため、抜けてしまっているものがあっても気がつかないということもあります。
③注意が別のものにそれてしまう
準備をしている際に、突然何かをひらめいたり、自分が興味を持っているものが目に飛び込んでくると、そちらに注意力を奪われてしまうというパターンです。
突然何かをひらめくのは、じっとしていられない人に多く、自分の興味のあるものを我慢できないというのは、衝動性が強い人に多くられます。目の前の準備から注意力がそれてしまった結果、何かを忘れてしまうということが起こってしまいます。
忘れてしまう原因は、脳にある
忘れ方には、先ほどの3つのパターンがあるわけですが、それらの原因は、その人の脳にあります。
とりわけ、情報の整理や意思決定を行っている前頭葉と呼ばれる部分や、一時的に情報を保持しておくワーキングメモリと呼ばれる部分の働きに問題があるとされています。
忘れ物が多い人は、脳のこれらの部位の働きが弱いため、注意力を自分でコントロールできなかったり、一度にたくさんの情報を整理できずに、頭が混乱してしまったりします。なので、精神論で「ちゃんと気をつけていれば、大丈夫」というわけにはいかないんです。
安易に気持ちの持ち方の問題として片づけてしまうのではなく、脳に問題があるということを理解したうえで、科学的に対処する必要があるんです。
忘れ物が生じやすい状態とは
タイプによって忘れ方に違いがあるわけですが、忘れ物が生じやすい状態にも、違いが出てきます。
①やり慣れていないことをするとき
新しいことをやりたがらない人や、頭の中がゴチャゴチャの状態になりやすい人は、やり慣れていないことをしたときに、何かを忘れてしまうことが多くなります。
とりわけ、ちゃんとしたマニュアルもない状態で、「自分で考えてやって」なんて言われたら、ミスが多発する恐れがあります。
②パニックになっているとき
いつも同じ作業をするのを好む人は、突発的なトラブルに弱いため、急にマニュアルにないようなことをさせられると、大事なものが抜け落ちてしまう可能性が高いです。
また、頭の中が整理できない人も、パニック状態ともなると、さらにひどい状態になってしまいます。
いずれのタイプも、混乱状態に陥ると、普通の人以上に、忘れ物を多発させてしまいます。
③やることが多すぎるとき
やることが多すぎると、同時並行で物事を処理するのが苦手な人は、頭の切り替えがうまくいかないので、ヌケやモレがたくさんでてきます。
集中力をコントロールするのが難しい人も、一度にたくさんのことを処理するのには向かないため、すぐに頭の中が整理できなくなり、何かをやり忘れてしまうといったことが多くなります。
④余計なものに気を取られているとき
余計なものに気を取られてしまうと、忘れ物をしやすくなるというのは、全タイプ共通です。
注意が一点に集中しやすい人では、余計なものに注意が集中してしまい、他の部分に注意を払うということができなくなります。
じっとしていられない人では、余計な考え事が頭の中にわいてくることで、注意が散漫な状態になってしまい、興味が移りやすい人では、余計なものに興味が移ってしまって、注意力をコントロールできなくなります。
⑤準備を先送りにしてしまったとき
誰にでもよくありがちなのが、先送りにした挙句に忘れてしまうということです。
先送りにするということは、その先送りにしたものを覚えておくということが必要になってくるのですが、ワーキングメモリの働きの弱い人は、それができません。
ちゃんと覚えておいたつもりでも、すぐに頭から飛んでしまい、気がついたら忘れてしまっています。
⑥思いつきで行動しているとき
思いつきで行動してしまうということも、中にはいます。
そうなってくると、本来予定していたことを忘れてしまったり、自分が思いつきで言ったことを、後で忘れてしまったりといったことが出てきます。
忘れ物を防ぐ脳科学的テクニック
注意しているのに忘れ物がなくならないという人に関しては、精神論では対処できません。脳にあまり負担をかけずにすむようなテクニックが、必要になってきます。
主なやり方としては、次の7つがあります。
①持ち物は必要最小限にする
忘れ物が多い人は、同時にたくさんのものを管理するのが苦手です。
そこで、まず徹底してもらいたいのが、持ち物の断捨離です。
物を減らすことによって、脳への負担が減れば、それだけ忘れ物のリスクを減らせます。
②一目でわかるようにする
物を減らしたら、次にやっておいた方がいいのが、一目で必要なものをチェックできる工夫です。
いちいち考えながらチェックしていると、その隙に注意がどこかにそれてしまう可能性が出てきます。
チェックリストを作っておいたり、100均で買ったカゴなどに必要なものを放り込んでおいて、出かける前にチェックしながらカバンに入れていくといったやり方もあります。必要になるものをリストアップしてチェックできるようにしておけば、毎回抜けているものはないのかを考える手間は減るので、脳への負担は減らせます。
とにかく時間をかけずに、パッとできるようにするというのが重要です。
③先送りせずに、さっさとやってしまう
準備をしないといけないものを「面倒くさいから、後でやろう」と先送りすると、先送りしていることをずっと覚えておかないといけないので、脳に負担がかかります。
必要なものがわかった時点で、すぐに準備してしまい、脳にかかる負担を減らしましょう。
すぐにやってしまうことで、やるべきことをずっと覚えておく手間もなくなりますので、それだけ脳への負担は減って、楽になります。
④余計なものが目につかないようにする
必要なものを準備する際には、余計なものが目についてしまわないようにしましょう。
興味を刺激するようなものを見てしまうと、すぐに注意力がそちらを向いてしまいます。
なので、周囲に余計なものがない環境で準備作業をすることが、大事になってきます。
⑤自分の頭で覚えておこうとしない
必要なものが分かったら、すぐに準備するというのが基本なのですが、どうしても状況的にそれができないということもあります。
ただ、自分の頭で覚えておこうとすると、忘れてしまう危険性が、かなり大きいです。
自分がよく目につくところにメモ書きをして、忘れてもすぐに思い出せるようにしましょう。
メモ書きだと、メモした紙を無くしたり、メモしたこと自体を忘れてしまうという人は、スマホのアラーム機能などを活用して、必要な時に思い出せるようにするという手もあります。
⑥予備を用意しておく
いろいろ対策はしてみたけれど、それでも忘れてしまうという場合には、予備を用意しておくというのも有効な手段です。
予備さえあれば、忘れてしまっても、その予備のものを使えばいいので、トラブルを最小限にできます。
ただ、注意点としては、使った予備はちゃんともとに戻しておかないと、次にまた忘れた時に、「しまった!予備がない!!」ということになりかねないので、そこだけ気をつける必要があります。
⑦ルーチン化する
手順に従って物事を処理することを好む人や、余計な考え事で頭の中がグチャグチャになりやすい人にとっては、準備のプロセスをルーチン化するというのも有効です。
手順に従って準備を進めれば、ヌケやモレを防ぐことができ、余計な考え事に気を取られる心配が少なくなります。
脳の仕組みを理解して、忘れ物を減らす
繰り返しになりますが、忘れ物が異常に多くなってしまう原因は、その人の脳にあります。だから、何度注意しても忘れてしまう自分をダメな人間だと決めつけて、自己嫌悪に陥る必要なんてないんです。
この記事で紹介したテクニックを使えば、忘れ物を減らすことは、十分可能です。
また、周囲の人も、「何度言ったら、わかるんだ!?」ということを言うのはNG。そんなことをしても、本人を傷つけるだけで、何の改善も見込めません。
忘れ物が多い人は、脳の機能の一部の働きが弱いせいで忘れてしまうんだということを理解したうえで、合理的に対処しましょう。