観察力は、コミュ力をアップさせるにはなくてはならないものです。
観察力が高まることで、周囲の人に適切に対応できるようになるだけでなく、いろんなアイデアも浮かんでくるようになります。
ところが、観察力を身に付けるといっても、具体的に何をどう見るようにしたらいいのか分からないという人も多いのではないでしょうか?
そこで、今回は観察力について解説し、どのようにして観察力を高めていけばいいのかをご紹介します。
観察力とは
ここでは、まず観察力がどういった力なのかを解説していきます。
あわせて、似た言葉との違いも解説していくことで、観察力に対する理解を深めていきます。
観察力とは
観察力とは、周囲の物事に対して注意深く目を向け、その物事の特徴や変化に気づく能力をいいます。
これを見ると
・対象となる物事に注意を向けること
・対象の特徴や変化に気づくこと
の二つの要素があるということが分かります。
観察力が十分備わっていないと、目の前の物事からうまく情報を得ることが難しくなります。
たとえば、新しくオープンした飲食店で食事をして、その感想をまだ行ったことが無い人から聞かれたとしましょう。
観察力が無いと、行ってみた感想は「おいしかった」や「良かった」の一言で終わってしまいます。
さすがに感想がこれだけだと、会話も弾みにくくなってしまいますよね。
出されたメニューを前にして、よく観察することもなく、おいしいかどうかに意識が集中してしまって他の部分をちゃんと見ていないとなると、感想はどうしても「おいしかった」の一言になりがちです。
観察力は、幅広い世代にとって非常に重要なスキルです。
小学校の作文でも、観察力が無いと良い作文は書けません。
与えられた題材について、日頃からある程度観察することができていないと、情報が少なすぎて書くことがすぐに無くなってしまうということが起こりやすくなります。
また、社会人においても、周囲の人とスムーズにコミュニケーションをとる上で、観察力は欠かせません。
ちょっとした変化に気づくことで対人関係のトラブルを避けることができたり、お客様の役に立つ商品やサービスのアイデアが浮かびやすくなります。
注意力、洞察力、直観力との違い
観察力と似たような言葉としては、
注意力、洞察力、直観力があります。
観察力の理解を深めるために、それぞれの位置づけについて確認しておきましょう。
まず「注意力」とは、物事の存在に気づいたり、物事に対して意識を向け続けたりする力のことを言います。
これは、観察力を構成する二つの要素のうちの一つ目です。
このことから、観察力を発揮できるようにするためには、注意力があるということが大前提となるということがわかります。
次に「洞察力」とは、観察した情報から物事の本質を見抜く力です。
観察力は、物事の表面的な特徴や変化を把握するのに対して、
洞察力は、さらに一歩踏み込んで本質的な部分にまで踏み込む力を言います。
最後に「直観力」とは、自分が持っている知識や経験から、無意識的に判断する力です。
観察力は、対象となる物事をよく観察して特徴や変化を把握するのに対し、
直観力は、対象となる物事をよく見ることなく、自分が持っている知識や経験をもとにして判断を下すというのが大きな違いです。
注意力と洞察力は、観察力に近い関係にあるのに対して、
直観力は、観察力とは真逆の関係にあると言えます。
観察力を高めるメリット
観察することができるようになることで、多くの情報が得られるようになり、それによって大きなメリットも得られます。
具体的にどのようなメリットがあるのかを見ていきましょう。
コミュ力が上がる
コミュニケーションにおいては、まずは相手のことをよく知るというのが大事になってきます。
相手がどのような価値観を持っているのか、何を欲しがっているのか、どんなことに困っているのかをちゃんと理解しておくことで、適切なコミュニケーションを取れるようになります。
たとえば、お寿司屋さんの気のきく大将がいたとしましょう。
大将がカウンター越しに接客していて、お客さんがお茶を飲んでいる場面を想像してみたください。
湯呑の底が高く上がれば、お客さんはお茶を全部飲み干したということになります。
その様子をそばでちゃんと見ていれば、大将としては、
「お客さんは、お茶のお代わりを欲しがるかもしれない」と考えることができます。
すると、お客さんからお茶のお代わりを注文されるまえに、先回りして
「お茶のお代わり、いかがですか?」と言うことができます。
このように、相手の行動や状況を観察することで相手が欲しがるであろう物をイメージすることができるようになります。
相手から要望が出る前に素早く動いて準備しておき、
「欲しい!」というタイミングでパッと出せるようにすれば、
相手から高く評価してもらえることは間違いないでしょう。
ただ、観察力が上がれば、必ずしもコミュ力もアップするとは限りません。
観察してばかりで、その後の行動が何もともなわなければ、単なる「人間観察」の状態になってしまいます。
一方で、コミュ力の高い人であれば、観察力も高くなります。
よく観察し、相手のことをよく理解した上でニーズや価値観を満たせるように行動するようにすれば、コミュ力を高めることにつなげることができます。
リスクを回避できる
観察力が高まって変化に敏感になれば、危険な兆候にすばやく気づくことができるようになります。
いち早く危険を察知することで、大きなトラブルを未然に回避することができます。
また、観察力が高まると、何か問題を起こしそうな人物や危険人物の特徴をつかめるようにもなります。
そうしたトラブルのもととなる人物の特徴に気づけるようになることで、人間関係のトラブルに巻き込まれたり、詐欺師をうまく回避できるようになります。
アイデアが生まれやすくなる
観察力が高まると、それだけ多くの情報が集まるようになります。
観察することで集まった豊富な情報は、アイデアを生み出すもととなります。
観察をしていく中で、
「何でそうなってるんだろう?」
と疑問に感じる部分が出てくれば、それが新しいアイデアを生み出すためのヒントになります。
さらに観察を繰り返して理由を理解できるようにすれば、「もっと良くする方法はないだろうか?」という改善策につなげることができるようになります。
また、周囲の人を観察することでニーズや困りごとを把握しておけば、どのような商品やサービスを作れば売れるのかということもわかります。
観察によってかき集めた情報をうまく組み合わせていくことで、新商品やサービスの企画をひらめきやすくなります。
観察力が高い人の特徴
観察力について、ある程度のことはわかっても、まだピンとこないという方も多いかもしれません。
観察力が高い人の特徴を知れば、観察力への理解も深まります。
具体的に、どういった特徴があるのかを見ていきましょう。
いつも周囲に気を配っている
まず観察力が高い人の特徴としては、変化にすぐに気がつくことが多く、いつも周囲に気を配っていることがあげられます。
注意力は観察力の要素の一つであることを考えると、観察力の高い人に高い注意力も備わっているのは、当たり前と言えます。
その注意力を生み出すもととなるのが、
「近くに何か危険なものはないか」という警戒心、
「どこかに困っている人はいないか」という誰かの役に立ちたい気持ち、
「なんか面白いものでも転がってないかな~」という好奇心です。
これらの、
安全な環境を確保したい、
誰かの役に立って喜ばれたい、
何か好奇心を刺激するような面白いものが欲しい
といった欲求がもとになり、それらの欲求を満たすために注意力が周囲に向くようになります。
また、観察力が高い人は、頭の回転が速い人も多く、
周囲に対して関心を持つことで、ちょっとした変化にもすぐに対応できるという人が多くいます。
思い込みや決めつけをしない
観察力が高い人は、「思い込み」や「決めつけ」をしないというのも大きな特徴です。
ちゃんと物事を観察できるようにするためには、あるがままを見ることができるようにするということが重要になってきます。
もし、思い込みや決めつけをしてしまうと、事実をゆがめて解釈してしまったり、注意力が向きにくくなります。
そうなってしまえば、ちゃんと観察しようとしなくなるという状態になりかねません。
「きっと~に違いない!」や「どうせ~なんでしょ?」のような感じで一方的に分かったような気持ちになってしまうと、正確に観察するということが難しくなります。
人間は、一度自分が正しいと認識したことに対して、そのことが正しいことを裏付けるような情報ばかりを無意識的に集め、逆に、都合の悪い情報は無視したり過小評価してしまう心の働きがあることが知られています。
(専門的には、「確証バイアス」と呼ばれています。)
観察力が高い人には、先入観を持たずに、「きっと」や「どうせ」といった言葉は使わないという人が多いものです。
細かい部分まで覚えている
一般的な人であれば、物事を観察した際に、大まかな特徴だけを把握しようとします。
目立つ特徴だけを見て他は省略することで、脳への負担を減らすことができます。
これに対して、観察力の高い人は、他に人が見落としてしまいそうな細かい部分までよく見ています。
細かい部分までよく見ることで、表面的な理解で終わってしまうのではなく、物事の本質を理解できるようになります。
また、記憶力も高く、細かい部分をずっと覚えていられます。
そのため、少しでも違いが生じた時に、「ん?前と何か違うな」と変化に気づきやすくなります。
なぜ観察するのが難しくなってしまうのか
がんばって観察力を高めようとしても、難しいと感じる人も多いかもしれません。
次に、うまく観察するのが難しくなってしまう原因にはどんなものがるのかを見ていきます。
意識が内側に向きやすい
これまで触れてきたように、ちゃんと観察できるようにするためには、意識を対象となる物事に向ける必要があります。
観察力が低くなりがちな人は、どうしても意識が自分の内側に向きがちになりやすいものです。
あくまで私の個人的な印象ですが、周囲をよく観察していない人には、頭の回転がゆっくりしており、繊細さんと呼ばれるようなタイプの人が多い気がします。
脳の情報処理能力がそれほど高くなく、外部からの刺激に過剰に反応してしまいやすいため、内向きになることで外部から入ってくる情報を制限しているのではないかと思います。
その他にも、変化を怖がる人も多くいます。
外から新たな情報が入ってくることで今までの自分の考え方や価値観が変わってしまうことを恐れるあまり、自分の殻に閉じこもって周囲にあるいろんなものを見ようとしなくなります。
あるがままを見ることができていない
観察をするうえで問題になってきてしまうのが、「感情」です。
物事を一目見た時に、好きか嫌いかを判断してしまうと、その後の観察の結果が偏ることになってしまいます。
最初に好きだと感じてしまえば、その物事の良い部分ばかりが目についてしまい、逆に嫌いだと感じてしまえば、悪い部分ばかりが目についてしまうことになります。
その一例が、恋愛でよく言われる「恋は盲目」です。
「この人のこと、好きかも!」と直感的に思い込んでしまうと、その人の良い部分ばかりが目についてしまいます。
関係が冷めてくると、逆にこんどは相手の欠点ばかりが目につきやすくなってしまいます。
感情によって判断が偏ってしまい観察がうまくできないようになってしまわないように、好き嫌いの判断は一旦横に置いておくことが大事になります。
脳内でぼんやりとしか認識されないことがある
脳の情報処理能力に問題があって、うまく認識できないケースというのもあります。
目に異常が無くて物理的にはちゃんと見えていたとしても、脳の中で認識される際に、全体像がぼやけてしまうということがあります。
たとえば、
・ホウレンソウ
・チンゲンサイ
・小松菜
を区別する場合には、どの部分で区別すればいいのかを知っていないと、三つとも似たような形をした葉っぱの野菜に見えてしまいます。
意識を向けた物事の細かい部分まで脳が情報を処理しきれないと、大きな特徴的な部分しか認識されないということが起こります。
一番困るのが、人の顔を認識する場合です。
人の顔をなかなか覚えられないと悩む人も多いでしょう。
目、鼻、口といった顔のパーツの位置は、どの人でも同じなので、一人ひとりの顔の違いというのは、それほど大きなものではありません。
脳の情報処理力が弱いと、他人の顔が全部同じように見えてしまい、細かな違いを理解するということが難しくなります。
そうなってくると、人の顔をうまく区別して覚えることができないということが起こります。
何に注目すればいいのか分からない
脳の情報処理力がそれほど高くない人にとっては、どこに注目すればいいのか分からないと観察するのが難しくなります。
一度に全体を細かく見ようとすると、情報量の多さに脳がついていけずに、すぐにパンクしてしまいます。
知識や経験が不足していると、何からどう見ていったらいいのかが分からず、パニックになって大事な部分を見落としてしまうということにもなりかねません。
記憶力がそれほど高くないという場合には、細かい部分を覚えておくということが困難です。
そのため、何か変化が生じたとしても気づくのも難しくなります。
観察力を高める方法
観察力が高い人の特徴や、うまく観察できない原因を知れば、解決策も浮かび上がってきます。
具体的に、どうやって観察力を高めていったらいいのかを解説していきます。
知識や経験を増やす
あらかじめ知識や経験を増やしておくことで、観察の対象となる物事が急に出てきた時にパニックにならずに済みます。
どこに注目すればいいのか分かるようになることで脳への負担を減らし、落ち着いて対応できます。
また、知識を持っておくことで、より細かい部分まで観察できるようになります。
例えば、何か「青い」ものを見たとしましょう。
青と一言にいっても、かなり幅があります。
絵具でよく使われる青の他にも、
プリンターのインクに使われている明るくて少し緑がかった「シアン」、
ファッションでよく用いられる、落ち着いた深みのある「ネイビー」、
さわやかさのある明るい色である「スカイブルー」というように、
いろいろなタイプの青があります。
こうした細かい違いがあるということを知っていなければ、見た時にうまく区別するのが難しくなります。
とりあえず全部「青いもの」としてしか認識されないということが起こってしまいます。
かく言う私も、もともと色を区別するのは苦手でした。
色鉛筆や絵の具に入っているような原色系の色しか分からず、パワポのスライドを作る時にも、刺激の強い原色系の色を使ってダサくなるという状態。
それが色彩検定の勉強を通して色をうまく識別できるようになったことで、今ではスライドを作るのが上手い人をお手本に、自分でもちゃんとスライドを作れるようになっています。
色の違いを色名やRGBといったもので区別できるようになったのは、かなり役に立ちましたね。
頭の回転の遅さや、情報の分解能の低さをカバーするには、知識や経験を増やしておくというのは有効な手段です。
ただし、逆に増やし過ぎてしまうと、決めつけや思い込みも起こりやすくなるという点には注意が必要です。
記録をつける
観察するポイントを決めて記録をつけるというのも、有効な手段です。
どうしても細かい部分まで覚えていられないという人にとっては、記憶力の無さをカバーすることができます。
数値化できるものであれば、数字で記録するというのもお勧めです。
ちょっとした変化に気づきやすくなるだけでなく、グラフ化することで視覚的に変化がわかりやすくなります。
言語化したり数値化したりするのが苦手だという人には、写真や動画を活用して記録するのも一つの手です。
あとでゆっくり見直すようにすれば、観察力の高い人のようにリアルタイムで観察するということができなくても、十分時間を取って観察することができます。
直感に頼らずに物事を見るトレーニングをする
観察するという行動は、物事の特徴や変化を素早く把握し、それらを覚えておくことが必要になってきます。
そのため、脳への負荷が大きいものです。
少しでも脳への負担を減らせるように、多くの人は簡単にできる直感による判断に頼りがちになります。
米国のスーパーでの買い物客の購買データを集めた調査によると、
「買い物客のほとんどは、文字ではなく色や形、画像、映像に反応し、選び、買う」
ということがわかりました。
(『マーケティングの本質』、日本経済新聞社、P2)
一つひとつの商品について、毎回細かいところまでチェックするというのはかなりの手間です。
パッと見た感じで気に入ったら買うというようにすれば、時間もかからず脳への負担も減らせます。
このように、わたしたちは日常生活の多くの部分において、直感に基づいた判断をくだしています。
ただ、観察するのが面倒くさいからと言って、観察するということを避けていたのでは、いつまでたっても観察力は身につきません。
何かに興味を持つということを意識し、興味をもった対象をじっくり観察してみるというのも大事です。
直感で判断するのではなく、意識的に見るようにするということを繰り返していけば、自然と観察力は身に付いていきます。