頭が固いと、新しい考えを受け入れるのに苦労しますよね。
「不確実な時代」や「秒速の時代」と言われる今、変化についていけないと悩む人も多いでしょう。
世代間のギャップを感じたり、外国人相手に自分の常識が通用しなかったりと、困った場面も多くなってきているではないでしょうか。
頭が固くなってしまう原因は何なのか、そして、柔軟な考え方ができるようになるにはどうすればいいのかを、科学的に解説します。
【目次】
頭が固い原因って、何?
「頭が固い」とは
「頭が固い」というと、自分のやり方や考え方に固執する、柔軟な発想ができない、自分と異なる考え方や価値観を認めたがらない、ということが挙げられます。
いわゆる「ねばならぬ思考」と呼ばれるもので、「~すべきだ」だとか「~であらねばならない」という考え方です。
頭が固い状態というのは、自分の過去の経験や価値観にしばられて、柔軟性を失った状態です。つまり、経験や価値観にしばられないようにすれば、頭を柔らかくすることができるということなんです。
柔軟な思考ができなくなる原因
年を取ると、頭が固くなるって言われてますよね。「頭が固くなるのって、脳の老化現象なの?」と思う人もいるかもしれませんが、そうではありません。
年を取ると、それだけ知識や経験が蓄積されていき、自分の価値観やアイデンティティもハッキリしてきます。
そうなってくると、周囲や他人に合わせようとするよりも、自分の中にある知識や経験、価値観に従って判断を下した方が、手っ取り早い上に、自分に一番合った判断を下せるわけです。
自分の知識や経験に頼ることで、素早い意思決定が可能になるだけでなく、余計な労力を使わずに済みます。
人間の脳は、出来る限り少ない時間と労力で、正確な意思決定ができるようにしようとするので、年を取るごとに知識や経験が増えてくると、その知識や経験をもとにして判断を下すようになります。
その結果、知識や経験が多くなると、早くて正確な判断ができるようになる代わりに、常識にとらわれて柔軟な思考ができなくなってくるわけです。
固い頭を柔らかくするには
固くなってしまった頭を、柔らかくしようとするのって、なかなか難しいですよね。でも、ちょっとしたポイントに気をつければ、柔軟な考え方をすることは可能です。
どこに焦点を当てるのか、そして、どのように解釈するのかということが、重要になってきます。
それでは、柔軟な物の見方を身につけるために、昔話の「ウサギとカメ」を例にとって、どのようにしていけばいいのかを、解説していきます。
カメに焦点を当てると
ウサギとカメの話では、主人公はカメですよね。
ウサギとカメが、山の上のゴールまで競走をして、ウサギは油断して途中で居眠りをしてしまい、ウサギが目を覚ました時には、カメはすでにゴールしていたとうい内容は、みなさんもご存じのはず。
そして、この昔話の教訓と言えば、
「まじめにコツコツ、あきらめずに努力するものが報われる」
というもの。
ところで、どうしてカメが、この話の主人公になっているんでしょう?
それは、真面目にコツコツ努力するという姿が、多くの日本人の自己概念(自分に対するイメージ)と重なるからです。そして、この話の教訓が、日本人が持つ価値観を表しているんですね。
この自己概念と価値観というものが、物の見方を決定する上で、重要になってきます。
それでは、価値観を変えてみて、この話の解釈を
「強いやつが相手でも、油断させれば勝てる!」
とすれば、どうなるでしょうか?
物の見方としては、間違ってはいません。ビジネスの世界では、相手を油断してハメるようなことは、よくあること。
でも、「いや、さすがにこれは、ちょっと・・・」と感じてしまうのは、自分が持っている価値観に反するからなんですね。
頭が固くなってくると、自分とは価値観が異なる考え方を認められなくなってきて、自分の価値観を相手に押し付けようとしてしまいます。
ですが、価値観は、絶対ではありません。
何も知らない外国の人に、このウサギとカメの話をして、解釈について何も説明せずに、「どう思う?」と聞いてみると、「カメは、ちょっとズルいんじゃないのかな」だとか「ウサギを油断させて勝つなんて、なかなかだね」という答えが返ってくるかもしれません。
他人と競争することに価値を置かない若い世代の人の中には、この話を最初に教えられたときに、話の内容を書き換えられて、「カメは寝ていたウサギを起こして、いっしょにゴールしました」と聞かされた人もいるそうです。
そうなってくると、若い人にウサギとカメの話をしたときに、「あれ?そんな話でしたっけ?」となりかねないわけです。
価値観は、時代や人によってコロコロと変わるもの。なので、頭の固い人にとっては、自分の価値観を大切にしながらも、相手の価値観も尊重するという姿勢が大事になってきます。
ウサギに焦点を当てると
いろいろな物の見方を身につけるためには、違った立場から物事をながめてみるということも大事です。この話の主人公はカメですが、ウサギの立場で見ると、どんな解釈ができるのかを考えてみましょう。
カメに勝てるだけの実力がありながら、油断して負けてしまったわけですから、
「どんなに有能でも、気を抜くと無能なやつにも負けてしまう」
と解釈できます。
競争相手に勝つということに価値観を置いた解釈です。
他にも、必死になってがんばることや、全力を出し切ることに価値があるという見方をすると、
「チャンスは、先送りするな!」だとか「全力を出さないと、後で後悔する」
という解釈もできます。
視点を変えて、ウサギを中心に見ても、いろいろな物の見方ができるというのが、お分かりいただけるのではないでしょうか。
頭が固いと、同じ視点からしか物事を見ようとしないので、ときには自分の立ち位置を変えてみるというのも大事です。
あまり自分の自己概念や価値観にとらわれ過ぎないように、注意しましょう。
第三者に焦点を当てると
それでは、中立的である第三者の立場から見れば、どうなるでしょうか。物事を冷静に解釈するという点では、第三者の立場に立って考えるということも重要になってきます。
まず、一つ目の解釈としては、
「ウサギは、カメばかりを見ていたので、ゴールできなかった。カメは、ひたすらゴールを目指していたから、ゴールできた」
というもの。
記憶が定かではありませんが、私がどこかのビジネス雑誌で見た解釈です。
ひたすらライバル会社を蹴り落とすことばかりを考えて、お客様とちゃんと向き合わないでいると、誠実にお客様と向き合っている会社に負けてしまうということを教えてくれるものです。
他にも、
「勝負は、最後になるまで分からない」
という解釈も考えられます。
もう少し言い方を変えてみると、
「強い者が勝つのではない。勝ったものが強いのだ!」
という解釈もできます。
これは、ドイツのサッカー指導者であるフランツ・ベッケンバウアーの言葉です。
いかがでしょうか。同じ話の解釈でも、立ち位置や切り口を変えるだけで、いろいろな解釈ができるのだということが、お分かりいただけたのではないでしょうか。
自分、相手、第三者という3つのポジションを切り替えて考えることができるようになれば、物の見方の幅は、一気に広がります。
頭が固くなってしまうと、どうしもて自分の立場に固執してしまうわけですから、それだけ思考の幅が狭くなってしまうんですね。
どこに焦点を当て、どう解釈するのか
ウサギとカメの話を例に挙げましたが、一つの話でも、見方によってたくさんの解釈ができるというのが、お分かりいただけたのではないでしょうか。
どれが一番正しいというものはなく、もっと他の見方をすれば、ここに挙げた以外にも解釈は考えられます。
ただ、たくさん解釈があるといっても、脳は一つしかないので、同時にいくつもの見方をするということは無理なんですね。
脳は、時間と労力を節約するために、たくさんある解釈の中から、自分の自己概念や価値観に合うものを、自動的に選び出しているんです。
その結果、自分に合うもの以外の解釈ができなくなってしまい、頭が固くなってしまうわけです。
自分は、頭が固くなってしまっているのかもしれないと感じたら、「自分は、なぜそこに焦点を当てているのか、そして、なぜそのように解釈しているのか?」を自問してみるといいでしょう。
自分がなぜ、その考え方にこだわりを持っているのかに気がつけば、他の物の見方もやりやすくなります。
見方を変えれば、いろんなものが見えてくる
頭の固い人は、どうしても一つの考え方にこだわってしまいます。先ほども書きましたが、一つの考えに集中することで、余計な時間や労力を使ってしまうのを防いでいるんですね。
ただし、その考え方が、その人にとってはベストな選択肢であっても、他の人にとっては、ベストであるとは限りません。なので、考え方が異なる人が、いっしょになってしまうと、意見の衝突が起こりやすくなってしまうんですね。
さすがに、そうなってしまうと、たまったものではありません。面倒なトラブルは、避けたいもの。
しかし、「どうしても、他人の考えていることなど、理解できない!」と思う人もいるでしょう。
他人の考えを理解する上でのポイントは、相手に完全になりきって考えることです。
その人の体の動き、話し方などをマネして、その人になりきった上で考えます。
そうしないと、自分の自己概念や価値観を引きずった状態では、その自己概念や価値観が邪魔をして、他の人の考えを理解できなくなってしまうんですね。
頭の固い人は、自分のやり方に固執するあまり、試しに他の人と同じことをやってみようと思わないので、他の人の考えを理解できないんです。
自分の考えに自信を持つというのは大事ですが、他の人の考えを理解するということも、文化や価値観が異なる人と付き合っていく上で、大事になってくるんですね。