声の印象が良くないせいで、就活やプレゼン、営業などで損をしている。
自分の声にコンプレックスを持つ人で、そう感じる人も多いのではないでしょうか。
実は、ちょっとした努力で、声の印象を大きく変えることができます。
声の問題の原因を明らかにし、声の印象を良くするにはどうすればいいのかをご紹介します。
【目次】
声の印象はコミュニケーションのゆくえを左右する
人前で話をしようとする時に、何を話そうかと話の内容ばかりに意識が向いてしまう人は多いもの。
しかし、第一印象に関する有名なメラビアンの法則によれば、話す内容が印象に与える影響は、わずか7%だけと言われています。
残りの55%が見た目や表情、しぐさなどの視覚情報、38%が声の大きさやトーンといった聴覚情報と言われており、声による印象は全体の4割にも及びます。
実際に、中身のある内容を話していたとしても、声が小さいと、なんだか自信が無いように見られてしまい、相手から信用を得るのが難しくなります。また時として、やる気が無いようにも見られてしまい、能力がある割には、あまり評価してもらえないということもあります。
このように、中身には全く問題が無いにもかかわらず、声の印象だけで誤解されてしまうということもあるわけです。
営業の仕事、特に不動産のような高額商品の売買の場合には、落ち着いた低い声の営業担当者の方が、契約を取りやすいと言われています。これは、落ち着きのある低い声の方が、クライアントに対して安心感を与えるためです。
さすがに高額商品ともなるとクライアントも、なかなか決断を下せないので、安心感を与えられる低く落ち着いた声が有利になるわけです。
声がコミュニケーションに与える影響は、かなり大きいというのがお分かりいただけるのではないでしょうか。
もしこれが就活や転職の面接だった場合には、人生すらも左右してしまうのです。
声の印象を悪くしてしまう7パターン
声の印象が悪いと言っても、いろいろなパターンがあります。
よく見かけるものについて、具体的にどのようなものがあるのかを見ていきましょう。
①第一音が出にくい
会話に入っていこうとする時や、人に話しかけようとする時に、最初の一言がなかなか出てこないということがあります。声を出そうとすると、喉のところでブレーキがかかったようになり、思うように声が出せません。
頭の中で話す内容がまとまらずに、なかなか話し始めることが出来なかったり、話す内容がハッキリしていたとしても、心理的なプレッシャーで声が出にくかったりします。
思うように発言できないので、受け身な人というふうに誤解されかねません。グループでの会話においては、下手をすると会話に入っていくタイミングをつかめずに、一言も話せずに終わってしまったという経験をお持ちの方もいらっしゃるのではないでしょうか。
②語尾が聞き取りにくい
一文の終わりの方の発音が不明瞭になってしまい、聞き取りにくくなるという場合もあります。そうなってしまうと、相手から何度も聞き返されたりしてしまいます。
相手から何度も聞き返されているうちに、自分自身も、「なんだか間違ったことを言ってしまっているから注意されているのではないか」と思うようになってしまます。
そうなると、余計にハッキリ言えなくなるという悪循環になることも。
③声が小さい
声の問題でよくありがちなのが、「声が小さい」ということです。声が小さいというのは、自信が無いというだけでなく、元気が無い、やる気が無い、性格が暗いといった印象を相手に与えてしまいます。
実際には、元気もあるし、やる気もあるというのに、声が小さいだけで誤解されてしまうのは、非常に困ったことです。
④トーンが一定
相手がちゃんと聞き取れる声ではあるものの、抑揚がほとんど無いような話し方では、まるでロボットと会話しているかのような感じを相手に与えてしまいます。
聞き取りには問題は無いものの、相手としては、なんだか冷たく感じたり、よそよそしく感じてしまったりするので、印象としては好ましくありません。
相手に親しみを持ってもらうためには、それなりの抑揚やリズム感のようなものが必要になってきます。
⑤滑舌が悪い、変なところを伸ばしたり切ったりする
相手にいい印象を与えるためには、聞き取りやすい言葉であることが重要です。
しかし、舌がうまく回らずに聞き取りにくい発音になってしまったり、特定の音を伸ばしてしまったりしていると、印象は良くありません。
文の変なところで息継ぎをして切ってしまったり、特定の音を何回も連続して発音したりということも同様です。
⑥声にハリが無い
声にハリがある人は、元気でパワフルな印象があります。
一方、しわがれた声など、声にハリの無い状態では、なんだか弱々しい印象を相手に与えてしまいます。
ハリのある声でなければ、なかなか説得力が出ません。
⑦咳き込みやすい
話している最中に咳き込んでしまいやすいという人も、まるで病人のような印象を与えてしまうので、好ましくありません。
場合によっては、相手からかなり嫌がられます。
特に空気が乾燥する季節であったり、夏場の冷房の直撃を受けたりすると、咳が出やすいという人もいます。
いい声を出せない原因とは
声は生まれつきだから仕方がないとあきらめてしまっている方も、中にはいらっしゃるのではないでしょうか。
確かに、生まれつきのものによる部分もありますが、実際には問題のある声の大部分は、ちょっとした習慣によるものが多いです。
いい声を出せない原因さえ分かれば、どのように対処すればいいのかも分かってきます。
①口呼吸
声の印象が悪くなる一番の原因として挙げておきたいのが、口呼吸による影響です。*1
最近では食べ物でも、食べやすいように柔らかいものが多いことから、顎の筋肉が衰えてしまい、そのため口が開いたままになりやすいという人が増えています。
そうなってくると、口から乾燥した空気が喉を直撃するようになり、ガラガラ声になりやすくなったり、空気中の雑菌が乾燥した喉の粘膜についてしまうと、喉のトラブルを起こしやすくなったりもします。
②空気をあまり吸い込めない
口呼吸の悪影響は、先ほど紹介したことだけではありません。鼻から息を吸い込むのに比べて、口から息を吸い込んでしまうと、呼吸が浅くなってしまいます。
そのため、吸い込む空気の量が少なくなってしまい、話すときに息をあまり吐き出すことができません。
よって、息切れを起こしやすくなってしまい、これが語尾の不明瞭さや、小さい声の原因になるわけです。
③腹式呼吸になってない
息を吸い込んだ際に、お腹が全然膨らまないという人は、胸式呼吸と呼ばれる状態になってしまっています。*2
この状態だと吸い込む空気の量が少ないため、息切れを起こしやすくなります。
それを改善するためには、息を吸い込んだ時にお腹が膨らむ腹式呼吸と呼ばれる状態にする必要があります。
腹式呼吸では、胸式呼吸に比べて多くの空気を取り込めるので、息切れしにくくなります。
④猫背
声を出すときに姿勢が歪んでしまっていると、声の通り道である気道も歪んでしまいます。*3
そのため、猫背になってしまっていると、遠くまで響くようなハリのある声が出にくくなってしまいます。
いい声を出すためには、背筋がまっすぐ伸びた正しい姿勢であることが重要です。
⑤あごの角度も重要
声を出す際に、あごが下を向いてしまっていると、少しこもった声になってしまいます。
試しに、斜め上を向いた状態で「アー」と声を出し、続いて斜め下を向いて同じように声を出してみてください。同じように声を出しても、声の感じが違うというのが分かるかと思います。
あごが下を向きやすい状態だと、声も暗い感じになりやすいので、スマホやパソコンの見過ぎで目線が下を向きやすいという人は注意が必要です。
⑥口の動きが小さい
発音する際に、口の周りの筋肉をあまり動かさない人というのは、発音が不明瞭になりがちだったり、滑舌が悪くなったりしやすいです。
言葉を聞き取りやすくするためには、ちゃんと発音できるようにするということが大事です。
口をあまり開けずに話そうとすると、暗い感じの声になってしまいます。
⑦舌の位置
声に関係する本で、よく取り上げられるのが、舌の位置です。*4
口を閉じた状態では、舌は上あごに張り付いているのが正常な状態だとされています。
口を閉じた状態で、舌が上あごに張り付いていない状態というのは、舌の筋力が不足している状態であり、滑舌を悪くする原因であるとされています。
⑧敏感な性格
自分に自信が持てないと、どうしても声を出そうとしたときにブレーキがかかってしまいます。
また、小さい声しかだせないために、何度も聞き返されてしまい、それが原因で、話すこと自体が苦痛になることもあります。
口の使い方や正しい姿勢といったことだけでなく、メンタル面でのフォローも、いい声を出す上では重要になります。
印象を良くするために注意すべきポイント
対面や電話での声を使ったコミュニケーションにおいて、重要なポイントは、相手の声の大きさ、ペースに合わせることです。会話のテンポがうまく合わないと、相手は話しづらいと感じるので、相手とズレすぎてしまわないように注意しましょう。
また、相手にうまく合わせることで、相手の脳は、無意識的にあなたを仲間だと認識するようになるので、相手の警戒心を解くことができます。
一方、プレゼンのような大人数を相手に話す場合には、大きく、ゆったりした声で話すということが重要です。声が小さい、話すスピードが速いというのは、自信の無さの表れだと受け止められてしまうので、気をつけましょう。
また、姿勢に気をつけるということも大切です。歪んだ姿勢だと性格まで歪んでいるのではないかと思われてしまうので、注意が必要です。ハリのある遠くまで届く声を出すためには、背筋がまっすぐ伸びた正しい姿勢であることが必要になってきます。
吸い込む空気の量が少なくて、声が小さくなったり、語尾が不明瞭になりやすいという方には、風船を膨らませるというエクササイズもお勧めです。*5
たかが声と思うかもしれませんが、声の印象は、説得力に絶大な影響を及ぼします。声で損をしないためにも、自分の声について見直してみましょう。
参考文献
*1)日本人のための声がよくなる「舌力」のつくり方 声のプロが教える正しい「舌の強化法」 (ブルーバックス)、P23~26
*2)「魅せる声」のつくり方 (ブルーバックス)、P16~20
*3)一流の人は、なぜ話し方よりも「声」を大切にするのか 「人を動かす声」を手に入れる姿勢トレーニング、P74~75
*4)日本人のための声がよくなる「舌力」のつくり方 篠原さなえ著、講談社ブルーバックス、P21~22
*5)「魅せる声」の作り方 篠原さなえ著、講談社ブルーバックス、P24~26