「怖い人」だと勘違いされないためのASDの人向け印象対策

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普通に接しているだけなのに、なぜか「怖い人」だと思われてしまう。怖そうに見えても実は優しい人というのは、世の中に多くいます。

 

とりわけ、ASDの傾向がある人は、無自覚のうちに相手に圧を与えてしまいがちなことがよくあります。

 

今回は、ASDの人向けに、周囲の人に怖い人という印象を与えないようにするにはどうすればいいのかについてまとめました。

なぜASDの人に印象対策が必要になるのか

ASDの人には印象対策が必要だと言っても、見た目に対して無頓着な人も多くいます。

ここでは、なぜASDの人は印象対策に気を配る必要性があるのかについて解説していきます。

 

周囲の人から怖がられやすい

自分の世界に閉じこもりがちなASDの人にとっては、「自分は周囲からどう見られているのか?」はあまり意識しないということも多いものです。内気で人前に出ることも少ないとなると、印象対策の必要性を感じる人もあまりいないのではないでしょうか。

 

しかし、たいてい人は、見た目で判断されてしまいます。そして、今の社会の中で生きていくためには、誰かとコミュニケーションを取ることは避けて通ることができません。相手から怖がられてしまうとコミュニケーションを取るのが難しくなってしまいます。そのため、相手に与える印象と言うのはすごく大事です。

 

実際にはASDの人自身は、怖い人というよりむしろ、怖がりな人であることが多いです。不安が強く、自分から積極的に人と接しに行くということに困難さを抱えています。そのため、自分の世界に閉じこもることで、自分を守ろうとします。

 

こだわりが強く、高度に専門的な知識や技能を持っていることがあり、どことなくカリスマのオーラが漂っているということもあります。

 

まるで住んでいる次元が違うかのような独特な威圧感が生じてしまい、普通に接しているつもりでも周囲の人からは怖がられてしまうということが出てきます。

 

付き合いづらい人だと思われてしまう

ASDの人は、感情を表に出すということが少なく、何を考えているのかが周囲の人にはわかりにくくなります。

 

楽しんでいるのか、それとも機嫌が悪いのかということが周囲の人から見てわからないと、周囲の人たちは、どう接したらいいのか分からずに対応に困ってしまうようになります。

 

また、ASDの人は自己開示するというのも苦手な傾向があります。自分がどういう人物なのかということを周囲にうまく伝えられないと、周囲の人はどう接していったらいいのかの判断が難しくなります。

 

結果として、付き合いにくい人だと思われるようになり、次第に避けられるようになってしまうということになりかねません。

 

困っていても気づいてもらえにくい

真面目で責任感の強い人も多いASDの人にとって、おそらく一番困るケースというのが、困っていても周囲の人に気づいてもらえないことです。

 

周囲から孤立化しやすいうえに、ひらすら一人で仕事や責任を背負い込んでしまいます。しんどそうな表情を何一つ浮かべないとなると、周囲の人からは「いつもと変わらない」と見られてしまいます。

 

つらそうにしていれば、優しい人が手を差し伸べてくれるということもあるでしょう。ところが、全然つらそうに見えないうえに怖そうな人に見えるがゆえに、周囲の人も積極的に助けに来てくれないということが起こってしまいます。

 

「困っているのに、どうして気づいてくれないのか」と疑問に感じるのであれば、それは困っているように見えない(むしろ、強そうに見えてしまう)見た目の印象に問題がある可能性があります。

 

実際に、私自身も困ったことがありました。

 

私が大学院生だった頃の話です。他の人は内定がもらえているのに自分だけ内定がもらえず、研究発表の準備で大忙しだったので就活もまともにできないという状況でした。

なんとか内定が欲しいのに学会での発表も任されてしまい、「どうして配慮してくれないのか?」と心の中ではいつもイライラを抱えた状態。

精神的ストレスのせいか少しうつ気味になり、体の動きもだんだんと鈍くなっていきました。

 

そんなある日、研究室の教授から何気なく言われた一言に、私は衝撃を受けたのです。

「ずいぶんと余裕そうだけど、大丈夫か?」と。

 

余裕どころか、当時の私は潰れかけていました。

 

どう考えても苦しい状況の中で、周囲の人の目には私が余裕をかましているように見えてしまっていたのです。原因は、苦しそうな表情を一切浮かべずに無表情だったことと、動きがゆっくりになっていたのが「堂々としている」と解釈されてしまったからだったようでした。

 

結果的に、なんとか奇跡的に内定がもらえたことで切り抜けることができましたが、もしも内定が無かったらと思うとゾッとします。

 

周囲の人から怖い人だと思われていたとしても関係ないと思う人もいるかもしれません。ですが、いざというときに助けてもらえるようにするためにも、印象に気をつけておくというのは大事なことなのです。

 

周囲の人に対して圧を与えがちな7つの要注意ポイント

ここでは、ASDの人のどういった点が周囲の人に圧を与えてしまっているのかを紹介していきます。

あわせて、それらがなぜ周囲の人たちにとって圧を感じさせるものになってしまっているのかについても解説していきます。

 

①目を合わせない

人と話をするときには、ちゃんと相手と目を合わせるように教えられた人も多いでしょう。目を合わせることには、「私は、あなたのことを信頼しています」や「私は、あなたを仲間として認識しています」という意味になります。恋人同士が見つめ合ってイチャイチャしているシーンを思い浮かべると、なんとなく理解できるかもしれません。

 

目を合わせるようにするというのは、コミュニケーションをするうえでは、非常に重要になってきます。

 

ところが、ASDの人は、目を合わせるというのが苦手です。目を合わせてしまうと、どういうわけか頭の中が真っ白になって、コミュニケーションができなくなるという人も多いかもしれません。

 

目を合わさないようにしてしまうと、目を合わせる場合とは逆の意味になってしまいます。「私は、あなたを信用していない」や「私は、あなたを仲間だとは思っていない」という意味として受け取られてしまい、それが相手にとって圧を感じさせてしまいます。

 

②無表情、無口、無愛想

ASDの人は、感情があまり表には出にくい人が多くいます。そのため、無表情になりがちです。特に、何かの作業に没頭していて、いわゆる「過集中」の状態になっている時には、無表情になりやすいです。

 

ただ、健常者の人にとっては、無表情になるのは多くの場合、機嫌が悪い時です。ASDの人が無表情でいると、そばにいる健常者の人の目には「機嫌でも悪いのかな?」というように映ってしまいます。

 

また、無口でいるというのも、機嫌が悪い時が多いというのが一般的な認識です。そのため、あまりしゃべらないでいると、やはり「機嫌が悪いのか?」と誤解されやすくなります。

 

さらに、周囲の人がやっている活動に積極的に参加しようとしなかったり、自分から挨拶しなかったりすると、先ほどの目を合わせない場合と同じ理由で、周囲の人に圧を与えることになってしまいます。

 

③リアクションが無い

会話する際には、相手の話に対してリアクションをするというのが重要になります。健常者の人の場合には、話の合間にうなずいたり、「そうですよねぇ」と言ったりして相手に対していちゃんと話を聞いていることを伝えるというのが一般的です。

 

ところがASDの人の場合には、うなづくこともほとんどせずに、黙って相手をじっと見ているという状態になりやすいです。

 

ほとんど動かずに相手をじっと見るという行為は、健常者の人にとっては、相手の目の前で怒りの感情をグッとこらえる時や不審者に対して注意を向ける時などにすることです。

 

そのため、会話の中で何もリアクションをしないでいると、「何か怒ってるの?」や「気に障ることでも言ってしまっただろうか」と相手を不安にさせてしまったり、不審者のような扱いにより相手を不快にさせてしまったりということになりかねません。

 

④専門用語が多い、細かい

ASDの人はプロの職人意識の高い人や学者気質の人が多く、難しい専門用語を誰でも分かるようにかみ砕いて説明せずに、そのまま使いがちです。

 

難しい専門用語は、たとえ分かりやすく説明できたとしても、専門外の人にはなかなか理解できるものではありません。

 

あまりにも専門用語を乱発してしまうと、話を聞いている側は、まるで知識マウントを取られているかのような印象を受けてしまいます。わかりにくい部分を質問したくても、「え?そんなことも知らないの?」と言われるのを恐れて気軽に質問するのも難しくなります。

 

また、細かい部分にこだわり過ぎてしまうことも、時として周囲に人に圧を与えてしまいます。

 

ちょっとしたミスも許さない人だと思われたり、ちょっとしたことで手抜きだと判断されてしまうのではないかと周囲の人から思われたりしてしまい、とりわけ仕事の面で同じ職場の人にプレッシャーを与えてしまいかねません。

 

⑤こだわりが強過ぎる、厳格過ぎる、共感が無い

こだわりの強さや厳格さは、プロとして仕事をしてく上ではプラスに働くものですが、周囲の人に対しては、どうしても厳しい人という印象を与えてしまいやすいものです。

 

「一方的に考えを押しつけられてしまうのではないか」や「何を言っても、聴いてもらえないんじゃないか」と周囲の人から思われてしまうと、圧を感じさせてしまいます。イメージとしては、「黙って俺について来い」という感じの昭和な感じの経営者を思い浮かべるとわかりやすいかと思います。

 

また、相手に共感する態度を示さないでいると、冷たい人という印象を持たれやすくなります。ASDの人の多くは、他人に対して無関心の傾向がありますが、健常者の人にとっては、相手に対して共感を示さないというのは、その相手を見捨てているかのように感じてしまいます。

 

⑥ユーモアが無い

真面目になり過ぎるがあまりユーモアが無いというのも、周囲に圧を与えやすい原因の一つです。ASDの人の中には仕事一直線の人も多く、ユーモアを出そうとすると「ふざけていると思われるのでは?」とマイナス評価を受けることを心配してしまう人もいます。頭が固くてユーモアのあることが思い浮かばないという人も多くいます。

 

ユーモアは上手く使えば、緊張をほぐしてコミュニケーションを円滑にする効果があります。アメリカなどでは軽いジョークを飛ばして笑いを取り、場を和ませるということがよく行われます。

 

また、ASDの人の中には、ユーモアのあることを言われても意味を理解できずに固まってしまうというケースもよくあります。単に理解が追いつかなくてそうなってしまいやすいわけですが、健常者の人から見ると、冗談が好きではない人であるかのような印象を持たれやすくなります。

 

⑦コミュニケーションをショートカットしてしまう

ASDの人は合理主義的な考えを持った人も多く、意味を感じないことはやりたがらないという人も多くいます。

 

コミュニケーションにおいても、枕詞を省略していきなり本題から入ってしまうということがよくあります。いきなり本題から入るというやり方は、とりわけ女性に対して圧を与えやすくなります。

 

また、長くダラダラしたやりとりを好まないことも多く、その場合には、文章も短く簡潔なものになる傾向があります。

 

ただ、雰囲気が伝わりにくいメールやチャットにおいて、短い文章で応答してしまうと、まるで機嫌が悪いかのような印象を相手に与えやすくなります。

 

どのようにして印象対策をすればいいのか

人前でしゃべったり、自分から話しかけていくのが苦手だというASDの人は、印象対策をするだけでもコミュニケーションのトラブルを減らすことができます。

どういった点を特に意識していけばいいのかについて解説していきます。

 

まずは見た目に気をつける

印象に与える影響が一番大きいのが、見た目です。優しい人であっても見た目に威圧感があると、どうしても怖い人だと勘違いされやすくなります。

 

特に表情は要注意で、無表情になってしまうのはできるだけ避けるようにします。「機嫌が悪そうだ」だとか「何か怒っているのではないか」と勘違いされないためにも、普段は笑顔でいることを心がけましょう。

 

鏡の前でいつもの自分の表情をチェックしてみると、周囲の人からどう見えているのかがわかりやすくなります。鏡の前で笑顔を作る練習をして、その時の顔の筋肉の動きを覚えておけば、人前で同じ表情を出しやすくなります。

 

また、相手と目を合わせるのが苦手な場合には、相手の眉間あたりを見るようにしたり、少し距離があるときには相手の胸元あたりを見るようにすれば、目がちゃんと合っているような印象を与えることができます。

 

リアクションについては、ASDの人はがんばって反応しているつもりでも、リアクションが全然目立たないことが多くあります。さすがにお笑い芸人さんのような派手なリアクションは必要ありませんが、ASDの人にとっては普段の300%増しくらいの勢いでやっと健常者の人と同じくらいのレベルだと思っておいた方がいいでしょう。

 

肩の力を抜く

ASDの人は、きっちりしなければと思うあまり、肩に力が入り過ぎてしまいます。そうなると緊張感が出やすくなり、周囲の人が圧を感じてしまう原因にもなります。

 

難しいことを説明する際にも、無理に全てを相手に分からせる必要はありません。ASDの人が思っているほど周囲の人の理解力というのはそれほど高くはないので、中学生くらいの子が理解できるようなレベルの表現で問題ないことが多くあります。

 

高い基準を他人にまで求めてしまうと、強いストレスを与えてしまうことにもなりかねないので、相手のレベルに合わせるように意識することが大事です。

 

共感を示す一言を意識する

一般的に人間は、論理よりも感情によって動いているとされています。合理的な思考をする傾向のあるASDの人にとっては、データや信頼できる情報源で相手を説得しがちですが、相手の感情も無視するわけにはいきません。

 

ビジネスの世界では「結論ファースト」と言われており、いきなり本題から入るという話し方は評価されやすいものです。

 

しかし、多くの人は感情で動くものだということを考えると、状況によっては共感の一言を入れるというのも大事になります。

 

参考になりそうなのが、最近のAIです。悩み事の解決策を教えてくれるように頼むと、回答文の冒頭で「それは大変ですよね」といった感じの共感の一言が入るようになっています。

 

そういったものを参考にしながら、使えそうな表現を自分にも取り入れていくようにするといいでしょう。

 

 

 

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